塩害の影響はどこまで?

投稿日: カテゴリー: 環境

先月、日本に上陸した台風24号は関東各地にも大きな爪痕を残していきました。
この台風は風台風と呼ばれており、降水量は多くないものの風が極めて強く、
けが人が出たほか、建物を損傷し電車の運休や遅延なども引き起こしました。

京成電鉄では、台風で海上から飛ばされてきた塩水が架線に付着したため、
送電線の一部がショートし出火するトラブルが相次ぎ、全線で運休したことは
記憶に新しいことと思います。
影響を受けた方々においては、大変な一日だったかと思います。

野菜の出荷についても、冬期に主産地となる関東、東海地方の太平洋側で塩害などの被害が続出しており、
冬場に向けて値上がりする可能性もあるようです。

そして、被害を受けたのは我々だけでなく、身近な自然もそのようです。

先日、調査で頻繁に通っている東京近郊のとある場所を訪れましたが、通常ならまだ
緑色の残っている広葉樹林も、先日の台風により塩をかぶったようで、茶色く冬景色のようになっていました。
周囲のオギの褐色と相まって、冬枯れのようにも見えます。

塩害の様子
現地写真:通常は緑色が残るはずの樹林も茶色一色となった。

ネット上の話題によると、東京、千葉などでは海に近い低い場所で多くの被害がありましたが、
神奈川では丹沢などの高い山まで塩害にさらされたようで、今季の紅葉にも影響があるのではと心配になります。

さらに、クローズアップしてみていくと、これら植物を餌とする生物の出現にも影響が出ていそうです。
例えば、これから越冬を控えているコムラサキやゴマダラチョウなどの幼虫にとって、
この時期に餌がないということは十分な餌を摂って越冬できるサイズまで成長することができず、
大きなダメージを受けるものと考えられます。

なお、ミドリシジミ類等の卵で越冬する種類については、夏に卵が産み落とされてから来春までは卵のままなので、
来春まで餌を食べる必要がなく、影響は小さいと考えられます。

その結果、越冬できずに死滅してしまう幼虫が多いため、来年に出現する個体数が減少してしまうということが考えられます。
このような影響を受ける種類は他にも数多いものと思われます。
そして、これらを餌とする種類も餌不足となり、大袈裟ですがこのような些細なことが連鎖して生態系全体に影響が波及していくことも考えられます。


参考写真:左がオオムラサキ幼虫(トゲが4対)、右がゴマダラチョウ幼虫(トゲが3対)
     通常は写真のように、越冬までに2cm程度の大きさまで成長する。

当地では来年も各種生物のモニタリング調査が続きますので、種レベルでのモニタリングは当然のこととして、
生物相全体及び生態系を通してみていく必要があるかと思います。


現地写真:ヤナギにつくコムラサキ。来年は元気な姿が見られるのだろうか?